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今の学校現場では

ピア・メディエーション

高槻市立如是中学校 小松 宏

 いま、受け持っている生徒たちは、小学校の時から何かと課題の多かった学年らしくて、2年目を終えようとしていますが、いっこうに小さなトラブルが絶えません。特に、「いじめ」につながる「からかい」は、しつこく続いています。普段、おしゃべり好きが多いのに、なぜこうなるのか? どこを伸ばしてやれば、もっとスムーズな人間関係を作り合えるのか? と考え続ける2年間でした。
 考える基本となったのは、「みんなやってる(言ってる)やん!」と言いつつ、トラブルは「みんなの間」で起こるということ。ということは、「なあ、なあ、そうやんな?!」と聞かれ、「う、うん」と答えてしまっていて、「(実は)違う!」と言えていないことが問題なのではないか? その違いに、お互いが気付けていないのではないか? 自分と相手は考えが違うということを認められていないのではないか? そこに気付けると、トラブルは減るのではないか? そんな思いが募るばかりでした。
 コミュニケーション能力を高め、自尊心を高めていくという取り組みや教材は、今までにもたくさんありました。『ピア・メディエーション』とは、「仲間同士でトラブルを解決する」という方法です。司法の場ではよく使われる手法だそうです。自分たちの中で起こることは、自分たちの力で解決させる力をつけさせないといけないのではないか。それが、ピア・メディエーションに取り組んだ理由です。


例えば、AさんとBさんの間でトラブルが起こっていたとします。二人で話し合っても言い合いにしかなりません。その結果、さらに解決から遠のいてしまいます。かといって、友達が間に入ってくれたとしても、どちらかに加担してしまい公正な結果にはなりません。そこで、「メディエーター」という公正・中立な立場の人に話を聞いてもらうことによって、自分たちの力でトラブルを解決しようとする方法が『ピア・メディエーション』です。
 これを授業の中で生徒たちに、3つのケースをワークショップ形式で体験してもらいました。トラブルの関係者であるAさん、Bさん、メディエーターの3つの役を実際にやってみて、いろんな立場を理解するためです。




 すると、意外なことに、こんがらがっていたトラブルを、うまく円満解決していくグループがたくさんありました。そして、一番気になっていた「相手の気持ちを考える」というところを、しっかり感じてくれていました。トラブルの当事者であるAさん、Bさんのお互いの気持ちを聞くことで、「ああ、相手はそういうふうに考えていたのか」と知ることで理解が深まり、「自分一人の考えだけがすべてではないのだな」と、自分の気持ちが変わっていくことを実感していったのです。もっとも、間に入るメディエーターの役はさすがに難しかったらしく、「大変や〜」という声がほとんどでしたが、その反面やりがいも感じていたようでした。「楽しかった」「またやってみたい」という声が90%以上を占め、生徒たちが「本当は分かり合える関係を作りたい」という気持ちでいることが伝わってきました。

 このように、ピア・メディエーションは、生徒相互の理解を深める手段として、中学校現場においてかなり有効であると実感しています。特に、自分たちでトラブルを解決していくという力は、今後、いろんな関係の中で生きていくうえで、相手の立場に立ったものの見方・考え方を養うために必要不可欠だからです。私自身も、授業の中で、またやってみたいという気持ちは生徒同様です。中学校でも十分使えるツールです。今後たくさんの中学校で広まっていってほしいと思います。