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活動報告記

メディエーションのための連続講座 @フレンズネット北海道

ピア・メディエーション研修in北海道

                   大阪府立茨田高等学校 公民科教諭 池田 径

 ピア・メディエーションの本場ノルウェーから、特別講師としてスクール・メディエーターのベリット・フォルスタッド先生が来日され、ワークショップをおこなってくださるということで、これは千載一遇のチャンスとばかり大阪から札幌に飛んで参加しました。
ベリット先生が英語で自己紹介をされたので、私も英語で自己紹介にトライしてみましたが、典型的なジャパニーズイングリッシュとなってしまいました。しかし、そんな私をベリットさんは素敵なスマイルで受け止め、緊張をときほぐしてくれました。もちろんベリット先生とのやりとりは、フレンズネット北海道の片野副理事長による見事な通訳のおかげで、問題なく理解できました。今回のワークショップ全体を通じて言えることですが、通訳付きとはいえ英語であったことで、かえってノンバーバルなコミュニケーションの重要さを体験的に理解できたというメリットもあったような気がします。
ワークショップはアイスブレークから始まって、まず参加者全員のための「安心できる居場所づくり」が目指されました。最初に配布された資料のトップページに、イスがまるく並べられた写真が載っていましたが、ベリット先生が、ここに今回自分が伝えたいことがすべて含まれているとおっしゃったのが印象的でした。まさに“みんなが輪になって座る”ことが、ピア・メディエーションのスタートでもあり、ゴールでもあるのだと。
ピア・メディエーションは、単純に訳せば「仲間同士によるもめごとの調停」であり、表面的に受け取ればありふれた話になりかねませんが、理解を深めれば深めるほど、それは従来の考え方に変更を迫ることが分かります。例えば、「もめごと」は通常「悪しきこと」ととらえられ、特に「和」を重んじる日本ではその傾向が強いですが、ピア・メディエーションでは、「もめごと」は相互理解のチャンスととらえ、ポジティブに受け止めます。また、従来、社会秩序を乱す行為は「ルール違反」であり、加害者をルールにもとづいて罰することで社会秩序を回復させるわけですが、ピア・メディエーションでは、社会秩序を乱す行為を「人間関係への違反」ととらえ、調停によって人間関係を修復し、社会秩序を回復させることを目指します。ピア・メディエーションは、従来の刑罰や正義の考え方を更新し、社会を維持する方法に根本的な反省をもたらすような視座に立っているのです。
このような視座に立つゆえに、ピア・メディエーションには、真のコミュニケーションが求められます。それは「言葉で話し合う」というだけではありません。言葉だけでなく、その他のあらゆるチャンネルを使って、「心の声を聞き合う」のです。もちろんそれは簡単なことではありません。ワークショップではそれがいかに難しいかということも学びました。「心の声を聞き合う」というロマンティックな響きとはうらはらに、それには実にシビアな訓練が必要になります。しかし、真のコミュニケーションをあきらめず、「心の声を聞き合う」ことの果てにこそ、ピア・メディエーションが目指す“修復的正義”があるのです。
2日間のワークショップで、私たちは真のコミュニケーションのための技法の一部を学べました。それらを知的に理解するだけでなく、さまざまなゲームを通じ、体験的に理解したことが重要でした。時間は限られていましたが、ベリット先生もおっしゃったように、時間が限られているということが、真のコミュニケーションにとって促進的に働くことがあります。それに、実のところ人生において時間が限られていないシーンなどないのです。私も帰りの飛行機の時間の都合で、2日目の後半の途中で退出せざるをえませんでしたが、このワークショップでたくさんのものを得ることができました。私は、この春から高校の現場でピア・メディエーションの授業を受け持つことになっています。このワークショップで出会ったすべての人たちへの感謝とともに、ここで得たものを生かして授業に取り組んでいこうという決意を胸に、北海道の地を後にしました。